ピロリ菌外来

ピロリ菌とは

腹痛ピロリ菌は正式名称をヘリコバクター・ピロリといい、胃の中に感染する細菌です。ウレアーゼという酵素で酸を中和するために、強酸の環境である胃の中でも生きていくことができます。慢性胃炎や胃がん患者の多くが感染しており、胃がんの8割はピロリ菌感染が原因であるとWHO(世界保健機関)が報告書を発表しています。日本人では2人に1人がピロリ菌に感染しているといわれ、ピロリ菌の感染検査や除菌治療を受ける方も増えています。

ピロリ菌の感染経路

ピロリ菌は経口(口から入ってきて)感染することはわかっていますが、それ以外の感染経路、予防方法はわかっていません。衛生環境の悪い地域で感染率が高く、4~5歳までの免疫力が弱い時期に飲み水などから感染すると考えられています。日本は先進国の中では例外的にピロリ菌感染者が多く、親子感染を含めて団塊の世代より上の方では70〜80%以上の方が感染しているといわれています。戦後復興前の衛生環境が整っていなかった時代の名残だと考えられています。20歳代より若い世代では感染率は低下しているものの、胃がんや胃潰瘍を持つ両親や祖父母から子どもや孫へ感染するケースも否定できません。

ピロリ菌と病気の関係

ピロリ菌といえば胃がんのイメージが強いですが、近年、ピロリ菌が関与すると考えられている病気がどんどん増えています。ピロリ菌がいることで慢性的な炎症が続いて胃粘膜の防御作用が弱まるために、ストレスや刺激性の食事、発がん物質などの影響を受けやすい状態になっているためだと考えられています。慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、ポリープ、特発性血小板減少性紫斑病などにピロリ菌が関与しているといわれています。

慢性胃炎

ピロリ菌が出すウレアーゼという酵素がアンモニアなどを生成し、胃の粘膜を傷つけたり炎症を起こしたりします。炎症が繰り返されて胃の粘膜が弱って次第に萎縮していき(萎縮性胃炎)、胃がんへと進行すると考えられています。無症状のことが多いですが、胃もたれや胃痛、吐き気を感じたり、空腹時の胸焼け、食後のむかつきがみられることもあります。

胃潰瘍、十二指腸潰瘍

自らの胃酸と消化酵素によって胃や十二指腸の粘膜や筋層が傷つけられ出血し、重症になると穿孔(穴が空くこと)が起こります。多くのケースでピロリ菌が関与していると考えられています。それ以外には、解熱鎮痛薬による血流障害や粘膜防御の低下が原因になることもあります。
みぞおちあたりがシクシク痛んだり、出血していると便に黒い血液が混ざったりします。吐血を契機に発見されることもあります。
潰瘍が確認されると、胃酸の分泌を抑えた上で粘膜を修復する薬などが処方されますが、ピロリ菌に感染している場合、薬を止めると高い確率で再発します。根治にはピロリ菌の除菌が必要です。

胃がん

世界保健機構(WHO)はピロリ菌が「確実な発がん因子」であると認定され、その他、食塩、喫煙があります。ピロリ菌に感染された胃の粘膜が萎縮性胃炎に進展してくると、、やがて胃がんができると考えられています。萎縮性胃炎とは胃の粘膜が薄く痩せてしまった状態(=萎縮)で、胃がんの発生リスクが高まります。

ピロリ菌の検査方法

内視鏡を使う検査と使わない検査があります。当院では、感染しているかといった存在診断には、主に病理検査、血清抗体検査を行い、除菌判定には便中抗原検査、尿素呼気試験で確認をしております。(●が当院で行なっている検査です)

内視鏡で行う検査

●病理検査(組織鏡検法)

内視鏡検査にて採取した胃粘膜を顕微鏡で直接観察しピロリ菌を検索する方法です。炎症の強さも同時に判定できますが、菌量が少ない場合は判定が困難となることがあります。

 迅速ウレアーゼ法

内視鏡検査の際に採取した胃粘膜を試薬に反応させて診断します。ピロリ菌が持つ酵素ウレアーゼが尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解することを利用して判定します。短時間で、内視鏡検査と同時に行えるメリットがあります。一方で、胃粘膜の採取場所によっては偽陰性(間違って陰性反応が出ること)、ピロリ菌を抑える薬を服用している場合には判定できないなどのデメリットもあります。

培養法

内視鏡検査にて採取した胃粘膜組織から菌を分離培養することで、ピロリ菌の存在を確認する方法です。

内視鏡を使わない検査

 ●血清抗体検査・尿中抗体検査

血液または尿検査で、ピロリ菌に対する抗体の有無を検査し、診断を行います。除菌後であっても2~3年は陽性でありますので、除菌判定には不向きであります。

 ●便中抗原測定

便を採取して、便の中のピロリ菌の有無を確認する方法です。

●尿素呼気試験

ピロリ菌が持つ酵素ウレアーゼが尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解することを利用しています。炭素の同位元素を含む尿素の試験薬を服用し、試験薬服用前後の呼気を比較して、服用後に同位元素を含む二酸化炭素が多く検出されるかどうかで、ピロリ菌の有無を判定します。検査精度を高めるために検査当日は食事抜きの条件下で検査をします。

ピロリ菌の除菌治療

薬2種類の抗菌薬(抗生物質)と、胃酸の分泌を抑える薬の3種類を、朝・晩の2回、7日間服用することで除菌を行います(一次除菌)。服用が終わってから4週間以上期間を空けて除菌の成否を確かめる検査をします。70〜80%の確率で除菌に成功するといわれています。当院では検査精度を高めるために8週間後に判定をしております。残念ながら不成功となった場合、2種類の抗生物質の組み合わせを替えて二次除菌を行います。二次除菌までで成功率は90%を超えます。
抗菌薬の服用で軟便、下痢、味覚異常などが出ることが報告されています。除菌薬服用を終了すればほとんど治まりますが、症状がひどい場合には医師にご相談ください。また、抗菌薬でじんましんや湿疹、発熱、腹痛や下痢などのアレルギー反応が出る場合には、直ちに服用を中止して医師にご連絡ください。
二次除菌で除菌に失敗した場合にはさらに薬剤を替えて除菌を行うことになりますが、健康保険が適用になるのは二次除菌までです。三次以降の除菌に関しては、医師にご相談ください。